社会や音楽etcについて
安倍政権は集団的自衛権に基づく安全保障関連法案10本をまとめて国会で審議し、それが2015年7月16日に衆議院で可決された。8月末の現在、参議院での審議が続いている。
ここでは、新聞やTVで公開された情報および、友人や知人から得た情報を基にして私が考えたことを述べたい。誤りがあるかもしれないが、その場合はお許し願いたい。
国会審議では議論されていないが、米国には安全保障法案を期待する理由がある。それは米国の財政事情である。
米国は国家財政の赤字を少なくするために軍事費を削減し、軍事力を縮小している。軍事費削減は、米国の世界の警察官としての力を弱くしている。その結果、米国は縮小された分の軍事力を日本に補ってもらいたいと考えている。
故に、米国は、国益の観点から、安倍政権が提案する安全保障関連法案を支持する。
1 国際環境が厳しくなり、日本が攻撃される危機が近づいている
2 日本が攻撃されたとき、米軍に助けてもらうために、日米同盟を強化する
3 日米同盟を強化するために、米軍が世界のどこかで攻撃されたとき
自衛隊が米軍を助けるという双務性が必要だ
4 そのために集団的自衛権が必要だ
5 憲法改正では時間的に間に合わない、
しかも憲法改正は否決される恐れがあるので
解釈改憲で済ませる
図1 中国から見た太平洋 日本列島、台湾、フィリピンによって太平洋への出口が塞がれている。東シナ海は浅く、南シナ海は深い。(東シナ海、南シナ海の画像検索より) |
幾つかの危機を想定することができるが、以下に4つの場合を考える。
航空機、車両、船舶などは旧式であり、燃料も不足している。
航空機や船舶などによる攻撃は、自衛隊が撃退可能である。
可能性がある攻撃手段はミサイルである。
ミサイルの弾頭は通常弾頭と核弾頭の両方が想定される。
標的は原発や再処理工場などの核施設、石油・ガスなどのエネルギー施設、新幹線などの交通機関、海底光ケーブルなどの通信インフラ。
標的の幾つかが同時にミサイル攻撃を受ければ防御することはできない。
その場合、北朝鮮は経済支援を完全に失い、独裁政権は崩壊に向かう。
在日の米軍基地を攻撃すると、米軍から大きな報復を受け、独裁政権は崩壊する。
北朝鮮が米軍基地を攻撃する可能性は低い。
本音は核弾道ミサイルで米国本土を攻撃できる対米核抑止力を持つことであろう。
核抑止力を持てば大きな経済支援を得ることが可能になる。
米国本土を射程内とする弾道ミサイルおよび核弾頭の小型化はまだ完成していない。
核弾頭を搭載した弾道ミサイルが数年以内に実戦配備されるとの情報が米国から出ている。
米国本土を狙う弾道ミサイルは北極圏を経由するはずで、日本上空を通過しない。
核弾道ミサイルを確実に迎撃する手段は現状では存在しない。
北朝鮮は経済支援を引き出すための駆け引き(瀬戸際作戦)はする。
ミサイル攻撃は独裁政権にとって自殺行為であり、その可能性は極めて低い。
米国にとって経済的な重要性は日本よりも中国の方が大きい。
米国は自国の国益を犠牲にしてまで日本を護ることはない。
尖閣問題で米国が軍事力を行使する可能性は低い。
米軍は中国本土を制圧する能力を持っていない。
東シナ海、南シナ海で中国軍が米軍を凌ぐことは当分ない。
中国と米国が交戦する可能性は極めて低い。
図2 中国が指定する第1列島線、第2列島線 東シナ海、南シナ海の画像検索より |
中国は北朝鮮と同様に対米核抑止力を持つことを進めている。
米国本土を射程に収める核弾道ミサイルを原潜から発射するシステムの配備を急いでいる。
中国は原潜探知が難しい南シナ海を経て太平洋へ出ることを計画している。この計画の一環として南シナ海のサンゴ礁を埋め立てる工事が着々と進められている。
(参考報道 毎日新聞2015.10.08 朝刊 http://mainichi.jp/m/?8jpM4o)
東シナ海では日中間に海底資源の領有権問題がある。
中国は東シナ海の資源開発を進めている。
尖閣問題は日本が独自に解決しなければならない。
図3 東シナ海のガス田開発 東シナ海、南シナ海の画像検索より |
図4 南シナ海の岩礁埋め立て 東シナ海、南シナ海の画像検索より |
日本が中国を制圧する軍事力を持つことは経済力および減少人口から不可能である。
日本は中国との衝突・摩擦を避けるために外交力を強化しなければならない。
ロシアと日本が交戦する可能性は極めて低い。
シベリア開発がロシア経済にとって重要であり、日本との経済・技術交流が重要である。
ロシア人の保護のためなら、ロシアは軍事力を行使する。
国益を護るために核抑止力を強化している。
北方4島は、戦争で獲得した領土と考えており日本に返還する可能性は極めて低い。
ソビエトは北海道の北半分を要求したが米国が要求を阻止した。
他方、日本には戦争に負けたという認識が希薄である。
集団的自衛権に基づいて自衛隊が対テロ戦争に参戦することを可能にすることが安全保障関連法案の本命であると考えられる。
2001.9.11の同時多発テロを契機として米国は対テロ戦争を開始した。そもそも、上記のテロを誘発した原因は米国に象徴される富裕な覇権者の行動にあった。対テロ戦争は、覇権者に対抗するイスラム過激派をさらに増やすことになり、中東からアフリカにかけて幾つかの国が混沌とした状態になっている。
米国および米国に追従する国家と被抑圧者であるイスラム過激派の間の摩擦に加えて、イスラム教宗派間の対立や部族間の対立が問題を一層複雑にしている。そうした中、2014年に突然、イスラム国が現れた。
図5 イスラム国が支配する地域 イスラム国分布の画像検索より |
対テロ戦争は戦闘地域が拡大しており、米国は広大な戦闘地域に十分な兵力を投入することができなくなっている。その理由は2つあり、軍事費削減および米軍兵士の死傷数を増やすことができない国内事情である。
その結果、米国は日本の自衛隊の協力を強く望んでいる。安全保障関連法案が可決されたら、米国は自衛隊の対テロ戦争への参戦を要求してくるであろう。
アルジェリアおよびシリアでは日本人がイスラム過激派やイスラム国の犠牲になっている。米国が行う対テロ戦争に日本が参加すれば、海外はもとより日本国内でも日本人がテロの標的となる。
在日の米軍が攻撃されたら米軍は反撃する。
米軍に被害がなく、日本が攻撃されたとき、日米安保条約の約束に従って、米軍が日本を助けるために反撃するかどうかは疑問である。
@自衛隊が米軍を助ける、A米軍が自衛隊を助ける、の2つの場合を考える。@とAが完全に対称であれば日米間に双務性があると言える。
しかし、現実は対称ではないと考える。例えば、対テロ戦争は米国が始めたものであり、米国の戦闘が対テロ戦争を拡大させている。それに比べて、日本は対テロ戦争の直接的な当事者ではない。日本は対テロ戦争に巻き込まれる立場にある。
別の例としてベトナム戦争を考える。米軍は沖縄の基地から北ベトナムに出撃していた。しかし、この出撃は米国の事情によるものであって、日本を防衛することとは関係のないことであった。
すなわち、日本から遠く離れた海外で米軍を助けるために自衛隊が武力行使することは、日本有事の場合に米軍が日本を助けるために武力行使することと質が違う話である。
日本が自分達で日本の領土を護る専守防衛ならば集団的自衛権は不要であり、個別的自衛権で対処することができる。
日本の領域外で自衛隊が米軍と共に軍事行動をするために集団的自衛権が必要であるとされている。その前に、日本が海外で外国の軍隊と共に軍事行動を取ることが本当に日本の国益になるのかどうかが吟味されなければならない。そうした場合の利害得失を十分に検討するべきである。
国際環境の悪化が理由であっても解釈の変更で憲法の中身を変更することは憲法違反であり、法治主義に違反する。憲法改正を憲法が定める手続きに則って行うことが法治国家のとるべき道である。
憲法はスポーツのルールに例えることができる。解釈改憲は、試合を有利に運ぶために試合の途中でルールを変更する行為に相当する。
憲法は政権の行動を縛る基本規則であり、政権側は条文の内容を自分達の都合に合わせて勝手に変えてはならない。憲法に抵触する政策を実現したいならば、憲法を改正しなければならない。
本命は自衛隊を対テロ戦争に派遣し、中東やアフリカで戦闘に参加することである。日本の周辺で日本が北朝鮮、中国、ロシアと軍事衝突をする可能性は極めて低い。
海外で軍事活動を展開するためには巨額の費用が必要である。米国は巨額な軍事費の財政負担に耐えきれなくなっている。米国の財政赤字改善を補完するために日本が軍事費を分担すれば日本の財政赤字は一層悪化し、日本は財政破綻に向かう。ない袖は振ることができないのである。日本の財政赤字は既にGDPの2倍もある。日本がギリシャ化する恐れが十分にあることを忘れてはいけない。
日本の自衛隊の軍事力は既に世界ランキングで高い位置にある。日本が目指すべきことは、防衛費を押さえつつ、安全保障を高める道を探ることである。要するに、軍事力というハードパワーではなく外交力というソフトパワーを強化することが大事である。
集団的自衛権を基に自衛隊が「対テロ戦争」と呼ばれているものに参加する可能性が高い。しかし、「対テロ戦争」の相手は見分けが難しい。背景にイスラム教があることは何となく分かっているが、 「テロ」行為にいたるプロセスが理解されていない。何故、イスラム過激派と呼ばれる人達が生まれるのかが理解されていない。
要するに、相手が何者であるのかが理解できないままに欧米側の価値観で戦闘が行われている。20世紀の欧米民主主義の価値観でいくら頑張っても対テロ戦争に勝利できないと思われる。
参考図書:イスラム戦争 (中東崩壊と欧米の敗北)
内藤正典著 集英社新書